マリア様がみてる 祥子のお話 その22007-04-17 Tue 20:05
という訳で続き。
祥子はなぜ父親とかを嫌っていないのか?あるいは嫌っていないように見えるのか? 理由その1 「彼らは良き父、良き夫である」 彼らの女癖が悪いとしても、彼らは決して自分の家庭を捨てたりはしない。妻も娘も大事にしている。そういう意味で祥子は決して不幸な家庭環境に育ったとは言えない。 理由その2 「祥子はオトナである」 祥子がオトナであるかについて議論はあるだろうが、少なくとも可南子よりはオトナだし、また読者の多くが思っているよりきっとオトナなのだ。 理由その3 「祥子は小笠原家の看板をしょって立つ覚悟がある」 上記2点を踏まえてここからが本題かな。ここからが長い。 小笠原家は言うまでもなく名家である。それも旧家というだけでなく小笠原グループという大企業体を傘下におく大金持ちである。その一人娘が祥子。男の兄弟はいない。この状況下で祥子の肩に掛かる物は重い。たとえ親がそれを求めなくても自然周囲の空気は重くのしかかり、祥子は早い頃から自覚することになる。 こうした場合、古典的なお嬢様に求められるのは、小笠原家を支える立派な婿養子を迎えることであり、そのための花嫁修業をする事だ。一連のお稽古ごとはそのためにあった。祥子はおそらく中等部のある時期までは強制ではなく自分の意志として、そのような生き方をしていたのだろう。この場合の「立派な婿養子」には「柏木優」という固有名詞が入るのだが、例のカミングアウト事件で祥子のここまでの生き方が否定されてしまう。祥子のショックというのは、好きな男に振られたとかそういうレベルではなく、もっと根本的に自分自身の信じていた価値観が破壊されたようなものだ。まあ失恋云々と言えば柏木の側が祥子を可愛い妹としか思えないのと同じように祥子も実際には優しい兄というのが実際の認識(本人がどこまで自覚しているかは別として)だったと思うけれども。 ここで目標を失って「怪獣」状態だったのを拾ったのが蓉子だ。その後の祥子の変化には色々な人が力を貸していると思うけど、とりわけ蓉子と祐巳の二人の力が大きいと思う。 そして祥子の目に見える変化(リリアン内での)とは別に、祐巳(とその視点を借りた読者)の目の届く範囲外で祥子は別の変化を遂げたように思える。それまでの古典的な良家の子女タイプの生き方(母親の清子みたいな)ではなく、もっとキャリアウーマン的な生き方への指向だ。言ってみれば「柏木さん(や他の男ども)の力を借りずとも、自分自身の力で小笠原家の当主として立派にやってみせる」という感じかな。父親の仕事を手伝ったり、また外部の経済学部に進学して父親を手伝いたいというのも、そういう意志の現れだと思う。 そうした変化はおそらく蓉子の影響が大きい。小説の中では祐巳の影響による変化が目立つけれども、それは祐巳視点からだからであって、そのような別種の変化は祐巳の目には入っていない。祥子が蓉子の受験問題で考え込んでいたのも、蓉子を心配しているというだけではなく自分自身の今後の生き方という物について考える必要に迫られた事も大きいと思う。長いのでここで一回切り。 |
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